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【結論】小論文の書き方
例題:昭和大学 2018年度
(中略)医師の長時間労働を改善するにはどうしたらよいか。あなたの考えを述べなさい。
なぜ、結論先行型も使える必要があるの?
前回のおさらい(問題提起・分析・解決型)
結論を述べてしまえば、小論文を書くときは極力、問題提起・分析・解決型で処理するのが望ましい文章構成です。「問題提起・分析・解決」型を紹介するならば、おおむね以下のような構成となっています。
まず、第1段落目で「はたして~だろうか。」といった具合に問題を提起し…
第2段落目で「こういう理由で」にあたる理由付け(分析)を行って…
第3段落目で「以上より、~である。」に相当する結論を述べる(解決)、というものです。
この3段落構成であれば、各段落の役割にメリハリがあるため、だれでも添削官へ論理的な心象を与えることができるのです。
詳しくは以下の記事を読んで、原則的な文章構成である問題提起・分析・解決型について学習しましょう!
文章構成を使い分ける理由とは?
講義内で「問題提起・分析・解決型で、ほとんどの設問は対処できますよ~」と指導していると、生徒からこのような質問が良くきます。
問題提起・分析・解決の3段落構成でほとんどの設問に対処できるんだったら、ほかの型を学ぶ必要ないんじゃないですか?
この質問に対し、私は以下のように回答しています。
問題提起・分析・解決の3段落構成でほとんどの問題は対処できるので、最悪、前回紹介した問題提起・分析・解決型、あるいは今回紹介する結論先行型、どちらか1つを使い続けてもかまいません。ただし、出題される設問の性質によって使い分けるのが好ましいですし、受験生自身にとっても負担が楽になりますよ! ぜひ、思考を停止せず、柔軟に対応するよう心がけてください!
小論文は、皆さんが思っている以上に様々な問題形式があって、そのどれにも通用するベスト書き方なんて存在しないんですね(あるなら聞いてみたいです)。
結論先行型の全体像
結論先行型の概要
結論先行型とはどういった文章構成をとるのか、その概要をみていきましょうか。
まずは、第1段落目で「私は~と考える。」といった具合に結論を先に持ってきます。その上で、以下の段落の布石となる「理由は以下の〇点だ。」との文章を置いておくのです。
そして、第2段落目・第3段落目で「1つ目は、~であるからだ。」「2つ目は、~であるからだ。」といった具合に結論を支える理由を持ってきます。
どうでしょう?とってもシンプルでイイカンジでしょ?非常にロジカルな書き方をしているので、論理を重視している理系の皆さんには好まれる文章構成なんですよね。
仮に「生きる意味とは何か?(600字以内)」との問題が出されたとしましょうか。この場合、具体的には以下のような書き方になります。
また、結論先行型をアレンジすると、以下のような文章構成をとることもできます。
まずは、第1段落目で「~の対策は2点だ。」といった具合に本問に対するまとめを先に持ってきます。
そして、第2段落目・第3段落目で「1つ目は、~であるからだ。」「2つ目は、~であるからだ。」といった具合にまとめを具体化した策などを持ってきます。
先ほど同様、「生きる意味とは何か?(600字以内)」との問題が出されたとしましょう。コチラの場合、具体的には以下のような書き方になります。
上記2つの型は、「今回の小論文テーマについて、理由を複数思いつきやすい設問なのか、対策を複数思いつきやすい設問なのか」で判断し、柔軟に使い分けてOKです!
さらに、結論先行型は以下のような文章構成をとることもできます。
まず、第1段落目で「私は~と考える。」といった具合に結論を先に持ってきます。そして、「なぜなら~だ。」といった具合に、理由も同段落に書いてしまいます(文章がコンパクトにまとまりますね)。
その上で、第2段落目に「では具体的にどうするか~」「~について深く考えてみると~」にあたる、展開を用意することで字数を増やすことができますね。
このような展開を持ってくることで、添削官に「お、この子は論を具体的に進めていて良いな。」とか「この子の案は現実味あるし、クリティカルなアイデアだ。」との心象を与えることができますよ!
上と同様、生きる意味とは何か?(600字以内)」との問題が出されたとしましょう。コチラの場合、具体的には以下のような書き方になります。
結論先行型の詳細
例題:昭和大学 2018年度
(中略)医師の長時間労働を改善するにはどうしたらよいか。600字以内であなたの考えを述べなさい。
回答例:昭和大学 2018年度
上記の「回答例:昭和大学 2018年度」はダウンロード・印刷していただけましたでしょうか? ここから結論先行型について、具。体的に解説していきますので、ダウンロードの上、印刷しておくことを推奨しますよ。 よろしいですね?
第1段落目:まとめ(結論)
医師の過重労働は様々な問題を孕んでいるが、ここでは解決策を以下に2点提案したい。
第1段落目では、医師の長時間労働というテーマについて、「解決策を以下に2点提案したい。」といった具合にまとめを先行させていますね。”いまから何を何点述べますよ~” ということを添削官に伝えておくと、相手は…
お、いまから解決策を2点述べるのか。この子は論理だった構成をとっているな…。以下の文章が楽しみだぞぅ。
との心象を抱いてくれます。
第2段落目:対策①
1つ目は、働き方による格差を解消することだ。ある程度自由に診療時間を設定できる開業医に比べ、勤務医は24時間運営の病院を背負っており、応召義務の狭間に立たされている。対策としては、ローテーション制を推進するのが良いだろう。ローテーション制とは、大病院等内の人材だけでなく、大病院等を抱える“地域全体”の人材を活用し、病院運営を回していく考えである。具体的には「○○クリニックの先生が月曜日当直」といった具合に、体力的・精神的に負担のかかる仕事を“地域全体”で分担・負担しあうのだ。
この段落では、1つ目の対策を述べています。様々な解決策が考えられますが、今回は「働き方による格差を解消すること」を選択しました。
皆さんご存じかと思いますが、医師ってめっっっっっっっっっちゃ忙しいんですよ。総じて医師は忙しいんですけど、中でも開業医よりも勤務医が大変みたいなんですよね。
開業医はクリニック等を開く時間や閉める時間を設定できますが、勤務医は24時間運営の病院を少人数でまわしていかないとならんわけですよね。なんか医療ドラマとかドキュメンタリー番組とかで、医師の過酷そうな現状を観たことありません?あれって、ほとんどの舞台は大学病院とか大きなところじゃありませんか?
そこで具体的な解決策の提示ですが、私はローテーション制を推進するのが良いと考えています。ローテーション制ってきいたことありますかね?お父さんお母さんが医師だよ~っていう人は、「あぁ、なんか月に1・2日くらい、深夜に大学病院行くときありますね…」なんていう経験あるんじゃないでしょうか。
ローテーション制をより推進することで、激務 of 激務である勤務医の仕事量が緩和されるのではないでしょうかね。少なくとも私はそう信じています。
あれ、ローテーション制ってもうすでに社会で取り組まれていません?
現代社会ですでにやっている対策案って述べてもいいんですか?
問題ないですよ!現代社会ですでにやっていることであれば、「この案を周知・徹底し、いまよりも強化すべきだ~」とか補足しておけばOKです!
皆さんが小論文テーマに対し思いつく対策案の99%は、すでに大の大人たちが「あーでもない」「こーでもない」と議論して、なんらかの形で取り組まれているものです。したがって、まったくのオリジナル対策案を思いつくのは非常にムズカシイわけなんです。
そのため、「いまやっている案を周知・徹底しましょう!」という思いがこもっていればそれで良いのです。少なくとも添削官は…
あぁ、ローテーション制ね。いまもやっていることだけど、この子は「より推進すべきだ」って言いたいんだろうね。OKです。
と捉えてくれるでしょう。
第3段落目:対策②
2つ目は、かかりつけ医制度を推進することだ。かかりつけ医は、身体に不調を抱えた際、気軽に相談ができ、ときに適切な専門医等を紹介してくれるため、無駄のない診療プロセスを提供する役割を担っている。しかし、日医総研によればかかりつけ医の普及率は5割程度であり、十分に普及しているとはいい難い。そこで対策として、医師会主導によるかかりつけ医制度の啓発活動を提言したい。会社・学校・地域社会等といった教育の場において、制度の概要・紹介等を実施することで多くの人から理解を得られるであろう。
この段落では、1つ目の対策を述べています。様々な解決策が考えられますが、今回は「かかりつけ医制度を推進すること」を選択しました。
皆さんには、”かかりつけ” と呼べる医師がいますか?通いなれている医院、自身をよ~く知ってくれている医師がいると、いつでもなんでも相談でき安心感が違いますよね。
それだけでなく、かかりつけ医は無駄な診療プロセスを省く役割も担っているんです。例えば、かかりつけ医がおらず、専門的知識だけを持ち合わせた医師のみに診てもらうとなると…
んー、これは眼科に行ってもらった方がいいですねー。
んー、これは耳鼻科に行ってもらった方がいいですねー。
んー、これは〇〇です。お薬出しておきますねー。
なーんて! あちこちクリニック・病院に行くこととなって、無駄な診療プロセスが出てきてしまいますものね!
そこで、具体的な解決策の提示として、かかりつけ医制度の啓発活動を提言してみました。自身のことをよ~く知ってくれているかかりつけの医師(総合医)がいた場合…
んー、これは目に症状がでてますけど、たしか〇〇さんって「この前から鼻水も止まらない~」なんておっしゃっていませんでした? だとすると、眼科よりも耳鼻科に行ってもらった方がいいかもしれませんね。総合病院に知り合いがいるので、紹介状だしておきますね。
んー、これは〇〇です。お薬出しておきますねー。
といった具合に、無駄な診療プロセスは省かれることが多くなります。
しかし、日医総研の調べによれば「かかりつけ医がいる」と答えた人は全体の5割程度、さらに若年層だとその割合は低く、完全に普及しているとは決していえない状況なのです。だからこそ、医師会などが舵をとって教育・啓発活動を実施していくのが望ましいと考えました。
ソフトランディングの重要性
と、ここまで講義を進めているとき、私は生徒に対し以下のような質問を投げかけます。
第1段落で「医師の長時間労働の解決策は2点ある」、第2段落で「1つ目は、ローテーション制を推進することだ」、第3段落目で「2つ目は、かかりつけ医制度の啓発活動をすることだ」と述べてきたね。ここまで文章構成を練ってきたけど、この3段落目で終わってしまったらどんな心象を受けるかな?
すると、95%の生徒は…
いやぁ…なんか気持ちが悪いですね…。なんかこう…、唐突に終わった感じがして読み心地が悪いです…。
と答えてくれます。そうですよね、なんかこう「読みきったなぁ!」「いい終わりだなぁ!」って感じがしませんよね!それもそのはず、最後にソフトランディングと呼べる段落がないからです。
第4段落目:ソフトランディング
患者の健康を守るのは大切であるが、その医療従事者の健康を守ることも大切である。適切な対策を実施し、医療従事者がより働きやすい社会を形成していくのが望ましい。
ソフトランディングとは、文章全体での熱い議論を冷まし、読者に「読み切ったなぁ」「いい終わりだなぁ」と印象つけるための、読み切り段落のことを指します。
飛行機が上空へと飛び立ち、お空を浮遊し、最後には空港に着陸する様子を浮かべてください。一度空に飛び立った飛行機が空港に着陸する際には、減速し、ゆっくりと降りてきませんか。文章もこれと一緒で、一度はじまった議論が過熱化した際には、議論を冷まして終わらせてあげる必要があるのです。
そこで上の文章のように、ソフトランディングでは意味のないことを書きつつも、これまで述べてきたこととほんのり関連性があり心地よい読後感を与えるような文章を配置していきます。この意味のないというのがポイントで、ソフトランディングでは意味のある文章を書いてはなりません。
例えば、「他にも地域枠制度を推進すべき~」とか「救急車の適正利用を促すべき~」といった具合に、新たな意見(意味のあること)を提示してしまうと、せっかく冷まそうとしていた議論が、再加熱してしまいますものね。なんでもかんでも良い意見を述べればいい、というわけではないんですね。
結論先行型をとるメリットとは?
以上で述べてきた結論先行型の文章構成ですが、最後にこの結論先行型をとるメリット、言い換えれば、どのような設問に対しこの結論先行型を選定するのが望ましいのか記しておきたいと思います。
メリット①:論理展開が明快である
結論先行型のメリットその①は、結論が最初に来るため論理が明快であることです。これは深く述べなくても分かりますよね。出題者からの質問に対し、その答えを頭に持ってきているわけですから、相手からは「きちんと設問に答えているな」との心象を与えられるのはもちろんのことです。
逆に、結論を最初に持ってくることのできないテーマについては、結論先行型が使いにくくなります。例えば、前回学んできたような杏林大学の過去問、「競争社会について論ぜよ(800字程度)」では、競争社会の何について論ずればいいのかテーマが決まっていないため、どれを結論に持ってくればいいのか分かりませんよね。
結論を最初に持ってくることのできないテーマが出題されたときは、問題提起・分析・解決型を使うのが望ましいんでしたね。詳細は別記事に譲りますので、まだご覧になっていない方はぜひぜひ確認してみてくださいね。
メリット②:具体的なテーマに対応しやすい
結論先行型のメリットその②は、具体的なテーマに対応しやすいことです。みなさんは、抽象的・具体的という言葉の正しい意味をご存じでしょうか。以下の図をご覧くださいな。
「犬」という概念を真ん中にとりましょうか。そうすると、その上位概念である「動物」が抽象的なワード、そして下位概念である「チワワ」が具体的なワードにあたるといいます。これを小論文テーマに当てはめて考えてみると、以下の図のような感じになります。
具体的なテーマの代表例は、種々の現代問題が挙げられます。医師の長時間労働問題や救急車の適正利用問題、さらに新種のウイルス等といった具合に、現代問題をピックアップして「君たちの知識量を計りたい」という大学からのメッセージがあるものです。
そして、このような具体度の高いテーマは、知識が必要な、具体度の高い結論が望ましくなります。具体度が高いということはそれだけ文章量を割かないといけなくなりますが、その点結論先行型は、結論やソフトランディングといった段落にムダな文章を入れる余地が少なく、結論を支える理由や対策といった重要な段落に文章量を割くことができるのです。
すみません、先生…。イマイチ抽象と具体の違いが良く分かりません…(泣
あ、全然大丈夫だよ! いまは軽く説明しただけなので、詳しくは以下の記事にまとめています!これまで学習してきた内容を整理する目的も兼ねて、以下の記事も合わせてご覧ください!抽象・具体の違いについて、より丁寧に書いてあるのできっと納得できますよ!
メリット③:文章構成が端的である
結論先行型のメリットその③は、文章構成が端的であることです。上で述べてきたとおり、結論先行型はムダな段落を極力省き、重要な段落に文章量を割くことのできる構成となっています。そのため、前回学んできた問題提起・分析・解決型に比べ、全体の文章量が短く、端的になりやすいのです。
したがって、「400字以内で述べなさい。」「300字程度で述べなさい。」といった制限字数の少ない問題が出たときは、結論先行型で捌いていくのが望ましいでしょう。
本日の課題
例題:昭和大学 2018年度
(中略)医師の長時間労働を改善するにはどうしたらよいか。600字以内であなたの考えを述べなさい。
回答例:昭和大学 2018年度
“【模範解答】昭和大学-医師の長時間労働” をダウンロード 4bf94913d282eb47c0a41fc41e15bcd0.pdf – 789 回のダウンロード – 407.63 KBでは、今日はここまで! お疲れさまでした!