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まずは、要約のエッセンスを復習
▼以下の記事の続編になります (まずこちらをご覧ください)▼
まずは、要約のエッセンスを復習しましょうか。「すでに上↑の記事で確認してるよ~」という方も、もう一度復習してみましょう。意外と抜けているところ、あったりしますからね。
まず要約とは、筆者の意見を真摯に受け取り、それを ”自身の言葉で” 簡潔にまとめることであって、「端的に」「怪しい要素を」「1段落で」まとめる意識が大切でしたね。
それもそのはず、要約問題は加点形式であって ”浅く広く” 文章の要点を拾っていって、得点をできるだけかき集めていく作業だからでした。
そして、文章を読解していく上で
・①重要な文に線(~ ー)を引き、
・②指示語に四角□をし、
・③接続詞に三角△をする。
これらの作業をしながら読んでいくと、内容が理路整然となって頭にスッと入ってきやすいんでした。中でも、③接続詞に三角△することは大切で、文章がどのような論理展開で進んでいるかを明らかにしてくれるんでしたね。
そして、要約問題を解くとき、読解をする上で最重要なポイントは2点ありました。
ポイントの1つ目は、「キーワード」を追いかけることです。
要約は、筆者の重要視している「キーワード」をそのまま抽出し、それらの言葉を ”自分の言葉で” つなげていく作業でしたね。本文を丸パクリして引用するのは△!
筆者が重要視している「キーワード」は、3つの特徴があるんでした。3つ、覚えてますか?
・繰り返し登場している、反復されている
・強調されている(例:” ”、「 」、ナンバリング)
・抽象度が高い(例:二元論、宗教、コミュニケーション)
これら反復・強調・抽象に該当する文言・用語を本文で見つけたときは、「あ、キーワードかな?」と疑い、要約にどんどん盛り込んでいきます。
ポイントの2つ目は、「イイタイコト」を追いかけることです。
どの文章であっても、「テーマ」と「イイタイコト」およびそれを支える「根拠」、この3つは必ず登場するわけで、これらをつかみながら文章を読解していくと内容を理解しやすくなるんでしたね。
中でも、「イイタイコト」つまり筆者の主張については、要約で必ず盛り込むべきものでした!
そして、要約で一番大切な「イイタイコト」をつかむためには…
・対立と同値の関係を丁寧に追うこと
・常識に反する主張を疑ってみること
が大切なのでした。
文章を読む際は、「○○は良いよね」一方で「✕✕は悪いよね」みたいに対立を表す論理関係、「〇〇と△△って結局同じこと言っているよね」といった同値の関係をつかんでいくのが、筆者のイイタイコトを理解する上で非常に大切です。
特に、対立の論理関係については、筆者のイイタイコトをつかむ大ヒントになってきます。なぜなら、対立の論理関係があった際には、筆者のイイタイコトは2パターンしかないからでした。
パターン①:筆者の支持度合いに差がある対立
「Aの例は良いよね! 一方、Bの例は悪いよね…。 だからAを支持します!」って感じだね!
パターン②:筆者の支持度合いに差がない対立
「Aの例は良いよね! 一方、Bの例も良いよね! じゃあ、合わせてCしようよ!」、あるいは「Aの例はダメだよね…。 一方、Bの例もダメ…。 じゃあ、私が新たに良い提案をしてあげる!Cするのはどうかな!」って感じだね!※このC部分が筆者のイイタイコト
また、常識に反する文章を見かけたときは、「筆者のイイタイコトでは?」と疑ってみるのが大切でしたね。なぜなら…
・現代文 = 近代以前に対する反省がテーマであるから
・現代文を書いている人が著名人・学者であるから
でした。アタリマエのことを現代文の文章を書いている人が主張するわけがないんですよね。
以上、要約のエッセンスまとめでした! 以下に、要約の神髄をまとめた記事を貼っておきますので、まずはこちらをご覧いただくことを強くおすすめします!
では、上記で学んだ要約のエッセンスを、以下の練習問題と解説を見ていきながら再確認していきましょうか。
上で学んだポイントを意識しながら、じっくり問題を解いてみましょう!
練習問題:医学部の小論文4-(1) 改題
問:下線部「両者の議論は噛み合っていない」とあるが、山崎と高久の議論はどのように噛み合っていないと筆者は言うのか、250字以内で述べなさい。(制限時間30分)
(中略)
しかし、現代では哲人のような禁欲的な精神主義を受け入れる人は少ないであろう。各個人には自由に生きる権利がある。意志で習慣を変えるのが人間的ならば、勝手に生きるのも人間的である。この選択は長い人生の生き方を決める人生観といってもよいであろう。柔らかい個人主義を主張する山崎正和氏は、「世界の先進国で『健康カルト』が荒れ狂っている観がある」という。そして、「この宗教には教祖も教義もないが、見えない神に信仰告白を競いあわねばならない」「人間の情熱が(健康という)1つの目標によって画一化され、まして国家によって善導されるのは、最大の時代錯誤といわねばならないだろう」と結んでいる(『読売新聞』1999年11月29日朝刊)。
これに対して、「健康日本21」企画検討会の座長である高久史麿自治医大学長は、「科学的根拠に基づいて健康の情報を国民に提示する必要がある。健康日本21に書かれているような行動を取るかとらないかは個人の自由であることはいうまでもない。決して生活文化を統制するようなものではない」と同誌で長文の反論をしている(1999年12月14日朝刊)。
しかし、両者の議論は噛み合っていない。基礎医学では価値観とは無関係な「普遍的な真理」を求めればよいが、これだけでは生活習慣病を予防することはできない。有害な肥満や喫煙を止めるには、その個人の価値観を変えるのが鍵なのである。臨床医学は予防・治療など、「行動の指針」を求める応用科学であり、価値観を含む。そして、このような価値観を形成しているのは思想や文化であり、個人の自由と多様な選択肢を残しながらも、思想を善導する努力が医師には要るのである。
(以下、略)
解説:医学部の小論文4-(1) 改題
いかがだったでしょうか。この文章を読んだ90%以上の受験生は…
?!??!
となって、ちんぷんかんぷんな解答をしてくるのが実態です。そのため「うわー、全然分からなかった―!」という人も、焦ることなかれ。「今回の問題は難しかったんだな」と割り切り、要約のポイントを丁寧に復習していきましょう。
今回の問題が解けていることより、要約のエッセンスを正しく理解でき再現性のある力が身についていることが大切!
第1段落:山崎氏の主張
しかし、現代では哲人のような禁欲的な精神主義を受け入れる人は少ないであろう。各個人には自由に生きる権利がある。意志で習慣を変えるのが人間的ならば、勝手に生きるのも人間的である。この選択は長い人生の生き方を決める人生観といってもよいであろう。柔らかい個人主義を主張する山崎正和氏は、「世界の先進国で『健康カルト』が荒れ狂っている観がある」という。そして、「この宗教には教祖も教義もないが、見えない神に信仰告白を競いあわねばならない」「人間の情熱が(健康という)1つの目標によって画一化され、まして国家によって善導されるのは、最大の時代錯誤といわねばならないだろう」と結んでいる(『読売新聞』1999年11月29日朝刊)。
まずは第1段落目です。ここでは、山崎氏の主張が書かれていますよね。
文章を読むときは、キーワードを追いかけていくんでしたよね。反復・強調・抽象的な用語・語句を見つけたら、〇をつけていきましょうか(ブログでは〇をつけられないので、太字でキーワードを抽出しています)。
キーワード
反復 … 健康、
強調 … 『健康カルト』、人間の情熱・健康・画一化・善導(まして~最大の時代錯誤 と強調)
抽象 … 精神主義、人生観、個人主義、『健康カルト』、人間の情熱、健康、画一化、善導
板書チックにキーワードをまとめると、こんな感じでまとめることができますね。
山崎さんという方は個人主義者なんですね(へぇ)。「個人主義」っていう言葉はわかりますか?「自己中」ってことではないですよ?いいですか?
「集団主義」は集団で物事を決めることに価値を置いている考えであるのに対し、「個人主義」というのは個人で物事を決めることに価値を置いている考えのことを指します。
そして、「個人主義」は ”会社とか国家ではない、あなた個人の意見、わたし個人の意見が大切なんだ!” と考えるのに対し、「自己中」というのは ”会社や国家、あなたの意見なんてどうでもいい! わたしの意見だけが大切なんだ!” と考える価値観のことを指します(まさに自己中ですね…)。
つまり、山崎さんは…
現代は、健康に生きるのも、不健康に生きるのも自由な時代だろ! なんで「健康でありなさい健康でありなさい」って、人間の情熱が画一化されないといけないのよ? まして中立的であるべき国家から(健康を)押し付けられなきゃいけないのよ! それこそ宗教染みてるだろ!
と反論しているんですね(だんだん分かってきました?)。
この後の文章の布石になるんですが、医師という職業は ”医師国家試験” をパスした人ができる職業であるからこそ、ほぼ国家的な立場を担っています。そのため、山崎氏は第1段落の文章を通じて、「医師も(患者個々人に対し)”健康でありなさい” という価値観を押し付けるなよ!」と暗に示しているんですよね。
第2段落:高久氏の主張
これに対して、「健康日本21」企画検討会の座長である高久史麿自治医大学長は、「科学的根拠に基づいて健康の情報を国民に提示する必要がある。健康日本21に書かれているような行動を取るかとらないかは個人の自由であることはいうまでもない。決して生活文化を統制するようなものではない」と同誌で長文の反論をしている(1999年12月14日朝刊)。
次に第2段落目です。ここでは、山崎氏の主張が書かれていますよね。
キーワード
反復 … ✕
強調 … 個人の自由(いうまでもない、と強調している)
抽象 … 科学的根拠、健康の情報、個人の自由、生活文化、統制
第2段落の1文目をご覧ください。「これに対して」という接続詞から文章がはじまっていませんか?
あ、これってもしかして、対立の関係ですか?
と思った方、賢い!その通りです!そう、対立と同値の関係を追いながら文章を読んでいくことが大切になるわけですが、まさにこの対立関係が出てきました。
そうなんです。前段落の山崎氏の主張に対立した形で、高久が反論を仕掛けています。このような対立関係を見つけたら、脳内を対立モードに切り替えてください。筆者のイイタイコトが見えやすくなってくるんでしたよね。
対立構造があったら、筆者のイイタイコトは2パターンしかないんでしたね!
板書チックにキーワードをまとめると、こんな感じでまとめることができます。
高久さんは、山崎さんの意見を受け止めています。その上で、
いやいや山崎さん、私たち医師はね、科学的根拠に基づいて患者さんたちへ「どういったものが健康につながり、どういったものが不健康につながるか」、その情報を提示すればいいんですよ。あと健康な生活を送るか否かは、個人の自由に任せとけばOK。
と述べています(わかります?)。
おそらくここまでの内容は、だいたいの受験生が理解できているのではないかと感じています。問題はこっからなんですよ。
第3段落:筆者の主張
しかし、両者の議論は噛み合っていない。基礎医学では価値観とは無関係な「普遍的な真理」を求めればよいが、これだけでは生活習慣病を予防することはできない。有害な肥満や喫煙を止めるには、その個人の価値観を変えるのが鍵なのである。臨床医学は予防・治療など、「行動の指針」を求める応用科学であり、価値観を含む。そして、このような価値観を形成しているのは思想や文化であり、個人の自由と多様な選択肢を残しながらも、思想を善導する努力が医師には要るのである。
最期に第3段落目です。ここでは、両者の意見を受け止めた筆者の主張が書かれています。
キーワード
反復 … 価値観
強調 … 「普遍的な真理」、「行動の指針」(「 」で強調している)
抽象 … 基礎医学、臨床医学、価値観
第3段落の1文目には、「しかし、両者の議論は噛み合っていない。」との文章があります。
この文章です! この文章とぶつかったとき、95%の受験生は…
?!???!ww か、噛み合ってません?www
と大混乱に陥るわけです。もう、授業中だったらドッカンドッカンよ。
そう、ほとんどの受験生であれば「山崎氏と高久氏の議論は噛み合ってるじゃない!」と思ってしますんですね。では、なぜ2人の議論が噛み合っているように見えてしまうんでしょうか?
それはズバリ、2人は「個々人の考えを尊重している」という点で共通しているからですよ!
山崎氏は、
現代は、健康に生きるのも、不健康に生きるのも自由な時代だろ! なんで「健康でありなさい健康でありなさい」って、人間の情熱が画一化されないといけないのよ? まして中立的であるべき国家から(健康を)押し付けられなきゃいけないのよ! それこそ宗教染みてるだろ!
といってましたね。
そして高久氏は、
いやいや山崎さん、私たち医師はね、科学的根拠に基づいて患者さんたちへ「どういったものが健康につながり、どういったものが不健康につながるか」、その情報を提示すればいいんですよ。あと健康な生活を送るか否かは、個人の自由に任せとけばOK。
と言っていたわけです。
つまり、この2人は「個々人の考えを尊重している」という点では一緒であり、噛み合っているように見えてしまうわけです。
え、じゃあ先生! 今回は設問(筆者)がおかしいってことですか? だって2人の議論は噛み合ってるんだし…
そんなことありません! 私たち読者は愚直に問題文を受け止めるべきであって、設問者・筆者が「噛み合っていない」というんですから、噛み合ってないんですよ!
では、山崎氏・高久氏の議論はどこがどのように噛み合っていないのか探していきたいんですけれども、どうでしょう? 第1段落・第2段落と読んできましたが、2人の議論が噛み合っていない点なんて明記されてましたか?
…書いてないですよね! 第1段落は山崎氏の主張であり、第2段落は高久氏の主張であるのに対し、第3段落は筆者の主張、つまり両者の議論が噛み合っていないといえる論拠を挙げているんです。
ここから対立と同値関係を追っていくことの重要性がしみじみ分かってくると思います。ワケが分からない文章が来たときほど、この対立と同値関係を丁寧に追っていくことが大切なんでしたよね。パズルを解くように、着実な読解をしていきましょうか。
第3段落を読んでいくと、「基礎医学では価値観とは無関係な「普遍的な真理」を求めればよいが、これだけでは生活習慣病を予防することはできない。」と書かれていますよね。この文章から、基礎医学・価値観✕・「普遍的な真理」の3つのキーワードは同値の関係にあることがうかがえます。
これを板書風にまとめるとこんな感じ。
この時点では、基礎医学という言葉の意味が分かっていなくて大丈夫だよ!
さらに文章を読み進めていくと、「臨床医学は予防・治療など、「行動の指針」を求める応用科学であり、価値観を含む。」という文章も見受けられますね。この文章からは、臨床医学・「行動の指針」・価値観〇の3つのキーワードが同値の関係であることがなんとなーく分かるかと思われます。
こちらも板書でまとめましょう。
上の板書のとおり、基礎医学・価値観✕・「普遍的な真理」という同値グループ、臨床医学・「行動の指針」・価値観〇という同値グループが見つかりましたね。
ここで1つ気づきませんか…? 予備校で教えているときも、ここらへんで勘づく受験生が多いのですが…
あれ、それぞれの同値グループって対立の関係になってませんか?
そう思った方、鋭い! 賢い! そのとーりなんですよ!(歓喜
上の板書のとおり、臨床医学~でまとまったグループと、基礎医学~でまとまったグループでは、”価値観を含むのか含まないのか” という点において対立の関係にあります。そう考えてみると、基礎医学というナゾ(?)なキーワードもどんなことを表しているのか、だいたい推測がつくでしょう。
臨床医学ってなんでしょうね。…そう、病院に赴いて実際に患者さんと相対しながら治療行為をする医師のことですよね。外科・内科といった臨床医は、具体的に以下のようなケースに直面することがあるでしょう。
患者Aさん、あなたは肝臓が弱まっています。過度のアルコール摂取が原因と思われますので、禁酒を心掛けてください!
そ、そんなこと言われましても…。私、唯一の生きる希望がお酒なのに…
え、そ、そうなんですか…(まじかよおい…)そしたら無理強いできないですよね… でも、健康になってもらうことは大切… あー!!どうすればいいんだ!!(葛藤
ほら、臨床医って ”その人に健康生活を押し付けるべきか否か” という点で葛藤、つまり「行動の指針」、価値観を含んだ仕事を追い求めていることが分かりますよね。
その臨床医という仕事と対立の関係にあるのは、いったいどのような仕事でしょうか? 臨床医が病院に赴いて実際に患者さんと相対しながら治療行為をする医師であるのに対し、実際に患者さんと相対することがない(少ない)医師… そう、研究医ですよね!
研究に没頭している研究医は、実際に患者さん(被験者)と接する機会は少ないですし、ましてその人の生き方や価値観に寄り添うことはほぼないはずです。それもそのはず、研究医は「普遍的な真理」を追い求める職業であるからなんですね。
ポテトチップスの食べ過ぎは身体に悪いのか、お酒の飲みすぎは身体に悪いのか、真理を見つけるのが僕らの仕事。でも、健康的な生活を送るか否かは皆が決めてね☆
こんな感じですかね。
臨床医学~のグループと、基礎医学~のグループがそれぞれ対立していることが分かったかと思いますが、ここからがお立ち会い。氷が解けていくように文章が理解できてきますよ!
実のところ、明文化していないものの、筆者は第3段落目で山崎氏・高久氏それぞれの噛み合っていない点を暗に説明しているんですね。つまり、臨床医学~のグループと山崎氏の主張が同値の関係、また基礎医学~のグループと高久氏の主張が同値の関係になっています。
つまり筆者は…
山崎氏は臨床医学的な立場から、「患者さんに健康行動を押し付けるなよ!」って主張していて、価値観を含んだ議論をしているな…
一方、高久氏は基礎医学的な立場(まるで研究医)から、「僕らは情報提供をし、健康行動をとるか否かは個人の自由だ!」って主張していて、価値観を含んでいない議論をしているな…
と、捉えていたからこそ…
なんだこの2人、価値観を含んだ議論・価値観を含んでいない議論をそれぞれしていて、話が噛み合っていないじゃないか!
と言っているわけなんですね(分かってきたかな?!)。
筆者のイイタイコトはどこ?
ここまで講義を進めていると、生徒からは以下のような質問がときどき来ます。
先生、対立構造があったときって、筆者のイイタイコトは2パターンしかないって言ってましたよね? 今回、筆者のイイタイコトってどこにあるんですか?
そう、対立構造があったときは、筆者のイイタイコトは2パターンしかないんでしたよね。
パターン①:筆者の支持度合いに差がある対立
パターン②:筆者の支持度合いに差がない対立
さて、今回の文章における筆者のイイタイコト(≒要約の一番大切な部分)はどこにあるんでしょう? 一緒に追いかけていきましょうか。
第3段落を読み進めていくと、「そして、このような価値観を形成しているのは思想や文化であり、個人の自由と多様な選択肢を残しながらも、思想を善導する努力が医師には要るのである。」との文章がありませんか? この赤線部分、蛍光ペンか何かで印しておきましょうか! これが筆者のイイタイコトです!
そして、対立というからには、先述の2パターンどちらかにあたるのですが、みなさんはどちらにあたるか分かりますか?
パターン①:筆者の支持度合いに差がある対立ですか?
いいえ、実はパターン②:筆者の支持度合いに差がない対立なんです!
なぜ、パターン②:筆者の支持度合いに差がない対立となるのか… 最後にこちらの話をまとめていきましょうか。いよいよオーラスです。
今回、筆者は高久氏に対し批判的な姿勢です。
高久氏は基礎医学的な立場から価値観を含んでいない議論をしているな… ダメ✕だこりゃ…
とはいえ、筆者は山崎氏に対しても批判的な姿勢をとっています。
山崎氏は臨床医学的な立場から価値観を含んだ議論をしているからOKかな… いや、山崎氏は「国家(医師)が患者さんに健康行動をおしつけるな!」って主張してて、思想を善導する努力をしてないな… ダメ✕だこれも…
こんな感じですね。
というわけで、結局2人の主張を否定した上で「俺が正しい主張をしてやる! この案はどうだ!」といった具合に新しい案を提示してきているんですね。
つまりは、こんな感じ。
2人の主張はダメ! だって、高久氏は価値観を含んだ議論してないし、山崎氏は「国家が健康をおしつけるな!」っていって、健康行動を善導する努力してないもの。
医師はね、”おせっかいおばさん” みたいなものなの。みんなが健康になってくれるように、少しずつ少しずつ「健康になってね」「健康になってね」って声かけしていって善導していくのが医師だろ!!
って言ってるんですね(シビれますね…!)。
以上がこの問題の解説でした! 以下に250字要約の解答例を載せていますので、答え合わせしていきましょうか!
模範解答:医学部の小論文4-(1) 改題
▼要約するとこんな感じ▼
山崎は人間の情熱が健康という1つの目標に画一化され、それを国家が善導することに反対しており、「行動の指針」を求める臨床医学的立場から個人の価値観に言及している。一方、高久は科学的根拠に基づいて健康の情報を国民に提示すべきで、生活文化を統制するものでなく健康的行動を取るか否かは個人の自由だと主張し、「普遍的な真理」を求める基礎医学的立場から個人の価値観へと言及していない。この点筆者は、個人の自由と多様な選択肢を残しつつも医師は人々の思想を善導するよう努めるべきとして、両者と異なる案を提示している。(250字)
※傍線部はイイタイコト(筆者の主張)にあたります。
▼以下に相当する趣旨がいくつ盛り込まれているか採点▼
1.山崎の主張:人間の情熱(=価値観)が健康という1つの目標によって画一化されることに反対
2.山崎の主張:(まして、)これが国家によって善導されることに反対
3.高久の反論:科学的根拠に基づく健康情報を国民に提示する必要がある
4.高久の反論:(しかし、それは)生活文化を統制するものではなく、行動をとるか否かは個人の自由
5.噛み合っていない点:高久の反論は価値観の問題について触れていない
6.著者の主張:(人々が健康であるには)個人の価値観を変えるのが必要で、思想や文化を善導する努力が医師や国家には必要
では、今日はここまで! お疲れさまでした!