小論文検定ってなに?
今回は小論文検定1級に合格した答案の中身についてお伝えしていきます。
えぇ、小論文検定ってなに?
と考えている方は多いでしょう。
小論文検定とは、NPO現代用語検定協会が年に2回開催する試験で、6級・5級・4級を認定するスタンダードコース、3級・2級・1級を認定するマスターコースが設置されており、受験したコースの中で、不合格・3級・2級・1級といった検定評価が返ってくるものです。
▼詳細は検定協会HPでチェック!▼
先日、僕も小論文検定という試験の存在を知り、小論文講師として受験してみたところ、なんと小論文検定1級に合格することができました。
ただ、調べてみると1級の合格率は2%ほどと狭き門になっているそうなので、「小論文検定1級のレベルってどのくらいだ?」と疑問に感じている人も多いでしょうから、今後受験される方の役に立てばと思いブログを記しています。
小論文検定1級の問題
2023年5月試験で出題された問題はコチラです。
■課題■ 世界に売り込みたい日本の技術・サービス・商品について
世界知的所有権機関(WIPO)の2022年版「グローバル・イノベーション・インデックス(GII)」によると各国の技術革新力を示す指数で日本は13位で、アジア諸国では韓国(6位)や中国(11位)よりも低くなっている。この順位を決めるスコアで日本は「人的資本と研究開発」や「創造的な生産」などが低いとされており、新しい産業のサービスや商品の輸出に占める割合が低いことが原因の一つとして考えられている。そうした分野での人材と産業を育成し、新たな技術やサービスの開発に取り組んでいくことが課題となっている。一方で、精密機器や素材、機械加工から農水産物・食品などの食材まで、日本が世界に誇る技術・サービス・商品は数多くある。あなたが世界に売り込みたい日本の技術・サービス・商品は何か、具体的な例を挙げたうえで、どのように売り込んでいきたいかを1200字以内で述べよ。
この問題では「人的資本と研究開発」「創造的な生産」といったキーワードが出ていますので、この趣旨に沿った回答をすべきでしょう。
ただ直接問われているのは、
✅あなたが世界に売り込みたい日本の技術・サービス・商品は何か
✅具体的な例
✅どのように売り込んでいきたいか
の3点で、このブログでお伝えしているところの「複数回答型」で対処できる問題だとすぐに感じました。
そのため、文章構成は
▶第1段落で「世界に売り込みたい日本の技術・サービス・商品とその理由」について260字で抽象的にまとめ、
▶第2段落で「売り込みたいサービス」について380字で具体的に記述し、
▶第3段落で「どのように売り込んでいきたいか」を440字で具体的にまとめ、
▶最後の段落でソフトランディングを配置し、熱い議論を冷ます聞こえの良い文章を配置する…
これでサクッと仕上げることができると思います。
小論文検定1級に合格した答案
以上を踏まえ、検定協会に送付した答案は以下の通りです。
私が世界に売り込みたい商品は、我が国の誇る日本酒を利活用した化粧品である。日本酒は弥生時代から続く伝統の嗜好品であり、その原材料も米・米麹・水と現地生産するものが主流だ。日本は労働集約的な農業形態で、良質な酒造好適米が生産されるため、日本酒は世界でも人気商品の1つとなっている。現に、アメリカのサンフランシスコでも日本酒ブームが過熱し、現地の米を活用した日本酒が生産されるまでに至ったという。そんな日本酒生産にイノベーションを起こし、発酵エキスの高い浸透力を応用した化粧品は、世界的にも唯一無二の商品ではないだろうか。
具体的には、勇心酒造株式会社が生産した『ライース』シリーズを推薦したい。同社は、ペリーの来航した一八五四年に創業した老舗で、日本酒生産を中心に発展してきた企業である。女性への風あたりが強い時代から活動していたこと、酒造りという力仕事・職人的仕事であったこと等から、社員のほとんどは男性が占めていたという。昭和後期から米の総合利用を会社全体で研究していた際、女性社員から「米の発酵エキスは浸透力が高く、優れた化粧品が開発できる」との一声があがり、これまで検討されてこなかった化粧品開発へと舵を切った。それ以降、会社としての収益が増大・安定化し、現員社員数の半分を女性が占めるようになったそうだ。このように、製品開発・労働体制のイノベーションを起こした事例であることから、勇心酒造株式会社の『ライース』シリーズ(化粧水・洗顔フォーム・ボディクリーム等)を推薦したい。
日本酒を利活用した化粧品は、具体的に二つの方法で売り込んでいきたい。一つ目は、SDGsへの寄与度をプッシュすることだ。前述の『ライース』は、SDGsの掲げる目標のうち、技術革新や経済成長だけでなく、ジェンダー平等、健康・福祉にも寄与している。中でも、SDGsの気運が高まっている西欧に向け、同社の製品をモデルケースとして掲げながら販売促進していくのが良いだろう。二つ目は、外国人観光客向けにプッシュすることだ。コロナ禍で、国内の観光業は売上が九割以上落ち込み、インバウンド消費にも大打撃を与えた。しかし、令和五年五月に世界保健機関が新型コロナ緊急事態宣言を終了したこと、日本でも感染症法上の位置づけが「5類」へ移行したことに伴い、国内の観光業は今後回復が見込まれている。良質な製品を大量に購入する中国系観光客には、『ライース』の高い浸透力を伝え、宿泊・体験・レジャー等に旅費を割く欧米系観光客には、それらの施設とタイアップした上で、旅行の土産として販売促進していくのが効果的だ。
イノベーションを検討する際、顧客のニーズから外れ、製品を無駄に発展させる「破壊的イノベーション」に陥らないよう留意しなければならない。人々が求める商品像を捉えつつ、その国の将来を支える技術開発・人材育成に取り組んでいくのが望ましいだろう。
(1200字)
添削されたこと
検定協会から返ってきた総評や添削も勉強になりますので、ここで共有したいと思います。
○ 良かった点
まず褒められた点は、
✅文章構成が明確で分かりやすい
ということと、
✅課題文をよく読み取っており、出題の趣旨を理解して商品を選定している
ということでした。
特に後者についてはけっこうベタ褒めされていました。
それだけ、今回のテーマは商品選びに苦戦した受験生が多かったのでしょう。
✕ 悪かった点
一方、指摘された点は、
✅和暦・西暦が統一されていない
たしかに、第2段落では「一八五四年」と表記しているにもかかわらず、第3段落では「令和五年」と表記され、統一感がないですよね。
これは返ってきた答案を見たとき、僕も「やってしまったな」と感じました。
ほかに指摘されたのは、
✅第4段落でいきなりイノベーションの話がきている
✅「破壊的イノベーション」との表記ではなく「イノベーションのジレンマ」との表記にすべき
正直、この2点については、小論文講師として「んぅ?」と感じました。
そもそも今回のテーマは “イノベーション” であって、第1段落から一貫してイノベーションの話を出していますよね。そのため、私個人としては「第4段落でいきなりイノベーションの話をしている」とは感じません。
また、「破壊的イノベーション」という用語についても添削されていますが、これは正式名称なんですよね。
スマートフォンが普及した現代において、ポケベルやガラケーをどれだけ発展させてもまったく意味ありませんよね?
このようなイノベーションを「破壊的イノベーション」と呼びます。
正式名称を添削されるのも、ちょっと違うんじゃないかな、と私は感じてしまいました。
添削から学べること
でも、ここからすごく大切なことが学べます! それは、
小論文や面接といった科目は、人がある程度の裁量権を持って評価する科目であって、人によって価値判断・評価基準が若干異なってしまうものだということです!
えぇ、答えがはっきりしてないなんて気持ち悪いんだけど…
そう感じる人は多いかもしれませんが、
答えがないからこそ、終わりなく探求できるのが面白いんです!
ぜひ皆さんも、小論文に興味をもって勉強してみてくださいね!