【結論】小論文の書き方
例題:国際医療福祉大学2018年度
…(中略)
少子化についての問題点を整理した上で、あなたの考える対策案を600字以内で述べなさい。
これまでのおさらい(小論の型)
これまで、小論文の型を2パターン紹介してきました。それが「問題提起・分析・解決型」と「結論先行型」でした。
問題提起・分析・解決型
「問題提起・分析・解決型」とは、「はたして~だろうか(提起)・こういう理由で(分析)・こう考えます(解決)」と、3段落構成で記述していくものでした。
・本文や写真などがある
・設問の文言が多義的
・抽象度の高いテーマ
・制限字数が多い…
これらの場合は、この文章構成がベターなんでしたよね!
▼問題提起・分析・解決型の詳細はコチラ▼
結論先行型
「結論先行型」とは、結論やまとめを第1段落に持ってきて、以下に理由や具体策などを詳細に述べていく段落構成でした。
・本文や写真などがない
・設問の文言が一義的
・具体度の高いテーマ
・制限字数が少ない…
これらの場合は、この文章構成がベターなんでしたよね!
▼結論先行型の詳細はコチラ▼
今回は、上記2つの型とは異なる、小論文の書き方【複数解答型】について記述していきます。
複数解答型の全体像
例題:国際医療福祉大学 2018年度
まずは例題から見ていきましょうか。国際医療福祉大学2021年度の問題を拝借しています。
例題:国際医療福祉大学2018年度
…(中略)
少子化についての問題点を整理した上で、あなたの考える対策案を600字以内で述べなさい。
解答例:国際医療福祉大学 2018年度
“【模範解答】国際医療福祉大学2018年度” をダウンロード 674e77fbd7074fc91ebab4f60e85b14c.pdf – 1710 回のダウンロード – 332.89 KB
文章構成を使い分ける理由とは?
上の問題を見たとき…
あれ、1つの設問で複数のことが問われてません…?
と感じたアナタ! 鋭い! 賢いですよ!
そうなんです、これまで勉強してきた問題2つを以下に並べてみましょうか。実のところ、どちらも1つの設問で1つのことしか問われていないんです。
例題:杏林大学 2015年度
「競争社会」について、800字程度で論じなさい。
例題:昭和大学 2018年度
(中略)医師の長時間労働を改善するにはどうしたらよいか。600字以内であなたの考えを述べなさい。
それに対し、先述の少子化に関する設問はどうでしょう? 1つの設問で複数のことが問われているため、上記2つの出題形式とは一線を画していますよね。
このような場合、これまで学習してきた「問題提起・分析・解決型」と「結論先行型」では、書きづらいったらありゃしないんです。
どちらも、1つの問いに注力して答えていく型だから書きづらいのよね…
そこで活用したいのが、複数解答型とよばれる書き方で、この書き方であれば複数の問に対しスマートな答え方をすることができるようになります。国際医療福祉大学や東京医科大学はじめ、「1つの設問で複数のことが問われる」ような問題を出してくる大学で活用できますので、ぜひとも体得してしまいましょう!
複数解答型についての解説は以下のとおりです。
複数解答型はいたってシンプルですよ!
複数解答型の概要
まずは設問を確認します。その際に、「何を」「何点」問われているかを点検しましょうね。
例題:国際医療福祉大学2018年度
…(中略)
少子化についての問題点を整理した上で、あなたの考える対策案を600字以内で述べなさい。
上記の問題では、「少子化についての問題点」はなんであるか、「(少子化の)対策案」はなんであるか、の2点が問われていますよね。
少子高齢化は小論文で本当に頻出の問題です! それだけ日本にとって危機的な現代問題なんですね(「私は分かりません」では済まされませんよ!)。
そして、これら問われていることの個数分だけ、それぞれ段落分けして解答するだけでOKです!
第1段落目:少子化についての問題点
少子化の問題点は大きく2つ挙げられる。1つ目の問題は、労働力が減少することだ。総務省によれば、2056年には日本の生産年齢人口が5000万人を下回ると推計されている。これにより、各企業はじめ日本全体で働く労働者が減り、経済成長の停滞・GNI低下へと波及しかねない。2つ目の問題は、財政状況が厳しくなることだ。道路や公共施設の整備、社会保障制度の維持等には国のお金が必要となる。この点、経済が低迷し税収入が減少することで、各分野へ再分配するための歳入が見込めなくなってしまう。加えて、少子化に伴う高齢化により、医療・介護をはじめとする社会保障制度全般に多大な悪影響を与えかねない。このように、少子化は国家の活力維持・存亡を左右する重要な課題であり、国を挙げて問題解決へ取り組む必要がある。
第1段落目では、少子化についての問題点を整理しています。少子化は労働力の問題だけでなく、担い手不足・限界集落の問題や、年金はじめ社会保障制度の維持ができない問題など、数々の諸問題を誘引してしまいかねない深刻な事態なのです。
今回の問題で注意したいのは、具体性を持たせることです。今回は「少子化についての問題点と対策」という、非常に(ヒジョーに!)具体性の高いテーマですので、抽象的な解答をしてはNGなわけです。
まず、労働力の減少が問題点として挙げられますよね。少子化が進むということは、それだけ将来の日本を支える生産年齢人口が減少していまうことになります。
国が稼ぐお金は「労働力」×「資本(工場とか)」×「効率性(技術)」で決まってきます。このうち、「労働力」が減少してしまえば、国が稼ぐことのできるお金(GNI等)も減少してしまいかねませんよね(大変だ)。
次に、財政状況の悪化が問題点として挙げられます。国の歳入は(国債の発行・相続税など細かい話を抜きにすれば)、その国の稼いだお金に課せられる税金によって成り立っています。そのため、経済状況が悪化すれば、それに伴い国に入ってくるお金も減少してしまうのは自明の理でしょう。
そうすると、国のお金で運営している事業が傾いてきてしまいますよね。例えば、道路整備や公共施設の整備にもお金はかかってきますし、医療や介護といった社会保障事業もマズい状況になってきてしまいます。こりゃ大変だ。
少子化は複雑な問題であるため、他にも問題点を挙げることはできるでしょう。自分なりにまとめてくれればそれでOKですよ!
第2段落目:少子化についての対策案
少子化の対策案を以下に2点提言したい。1つ目は、男性の育休取得の推進だ。厚生労働省によれば、「母方ばかりに負担が偏り2人目を育てる体力がない」と考えている人が多数を占めているという。そのため、企業へのセミナー・社会への啓発を通じ、男性の育休取得および育児参加を促していくことが肝要である。2つ目は、教育費用のサポートだ。厚生労働省によると、「教育にかかる費用が高い」と考え、出産を諦めている家庭が多いという。そのため、義務教育期間に限らず、高等教育機関へ進学する者への補助金や奨学金制度の啓発・充実化を図るべきであろう。
第2段落目では、少子化についての対策案を整理しています。ここでは、男性の育休取得の推進と教育費用のサポートを、その対策案として提示しました。
ところで皆さん、女性と男性、それぞれの育休取得率ってどれくらいかご存じでしょうか? 厚生労働省の調べでは、女性の育休取得率は81.6%と高水準であるのに対し、男性の育休取得率は12.65%と低位に留まっているのが現状です。
これでも男性の育休取得率は近年伸びているのよね… しかし、もう少し伸ばしておきたいところ…
そして、国の発刊している『少子化社会対策白書』によれば、男性が家事・育児へ従事する時間が増えるほど、女性の負担が減り、第2子以降を出産する率が高まることも指摘されています。だからこそ、男性が育休を積極的に取得するように促して、男性・女性の区別なく家事や育児に取り組むようにするのが最適解なんですよね。
なので、私も子育てや家事には積極参加するようにしています!笑
それから、教育費用について支えることも重要だと言えるでしょう。以下のグラフをご覧ください。
『少子化社会対策白書』によれば、左から1番目の「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」というのが、理想の子ども数を持たない理由として1位に挙げられています。そう、大学受験1つとってみても、予備校代・講習費・交通費・教材費・受験費… そしてなにより高額な大学の授業料などが挙げられますよね。
うちの娘が大きくなったときが怖い…!
先進国が少子化傾向になるのは、この教育費用の高騰に原因があると言って良いでしょう。そのため、奨学金や補助金制度の充実を図ったり、教材費や留学費用のサポートをしたりと、国や地方公共団体が積極的に教育資金のサポートをするのが望ましいです。
医学部の「地域枠」制度もその一環と言えるでしょう。一定期間、指定された地域に従事することにはなりますが、金銭的なサポートを受けられるのは強い魅力ですよね。
このように思考をめぐらして、模範解答のような文章を書きあげました。いかがだったでしょうか。ぜひ、音読しながら構成・文章力・内容などを味わってみてくださいね!
複数解答型をとるメリットとは?
複数解答型で記述するメリットってなんですか?
複数解答型のメリットは2点です!
メリット①:ロジカルに解答できる
第一のメリットは、ロジカルに解答できることです。
出題者側は
えーっと…「A」と「B」、あと「C」について答えて。
といった具合に、A・B・Cそれぞれに答えてほしいと考えています。そんなとき、複数解答型を用いることで…
第1段落は「A」、第2段落は「B」、第3段落は「C」について答えていきます!
と主張を明示することができます。どうでしょう? そのような解答をしてくれれば、出題者としても「おぉ、キチンと設問に答えてくれているな…」との好印象を抱きませんか?
メリット②:問われている事項を落としにくい
第二のメリットは、設問で問われている事項を落としにくいことです。
小論文でやってはいけないことはいくつか挙げることができます。それこそ、「字数の過不足があってはいけない」や「途中答案で提出してはいけない」、「判読できない文字を書いてはいけない」、「倫理・道徳的にアウトな内容を書いてはいけない」など様々です。
そのうちの1つに、「設問で問われていることにキチンと答えなくてはいけない」という絶対的なルールがあります(ひぇっ…)。そりゃそうですよね! 設問とまったく違った内容を書いているのに、「いーよいーよ!気にしないで!^^」なーんて、大学側が許してくれるはずないですもの!
設問を丁寧に分析した上で、「何を」「何点」問われているのか点検し、その分だけ段落分けを行う複数解答型を用いれば、それだけ出題者が「答えてほしい」と考えている事項の見落としが少なくなりますよね。
以上が「複数解答型」の説明でした。”あなたの意見を述べる” タイプの小論文は、これまで学習した「問題提起・分析・解決型」「結論先行型」「複数解答型」を使い分ければ、98%の問題に対応できますよ! ぜひ体得しましょう!
本日の課題
例題:国際医療福祉大学2021年度
…(中略)
少子化についての問題点を整理した上で、あなたの考える対策案を600字以内で述べなさい。
解答例:国際医療福祉大学 2021年度
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では、今日はここまで! お疲れさまでした!