現代文キーワード読解(Z会)


現代文も小論文の要約も苦手… なんで俺はこうも読解力ないんだ…
って思っている人の多くは語彙(キーワード)不足に陥っています。
例えば以下の文章を読んだときも、語彙力のある人とない人では…
大衆文化は大衆社会に固有の権威的構造・秩序のなかに組み込まざるをえない。
引用:現代文キーワード読解

大衆社会…ねぇ? 人が…こう…いっぱいいるって…なんか…良いよなぁ?

たしか大衆社会って、大多数の人々の集団が大きな力を持つ社会みたいな意味だけど、その背景には民主主義が形骸化したり、政治離れが進んでいって、受動的かつ画一的な個人が生まれてきた… 他社やメディアの情報に流されやすい… 的なニュアンスがあったよね。まだ先は読んでないけど、どうせ筆者は「主体性が失われたぞ!しっかりしろ!」的なこと書くんだろな。
といった感じになりますし、
ヨーロッパと日本では心(精神)と体(身体)の関係に違いがあるとはよく言われることだ。ヨーロッパではデカルトの心身二言論に端的に示されているように心と体のあいだにはある種の断絶がある。
引用:現代文キーワード読解

こころ……み……に……?

あぁ、心身二元論が出たか。人間を精神と身体(物体)との二つに分けて考えることだけど、このおかげで心理学をはじめとする多くの科学が発展し、分析が進んでいったんだよね。ただ、「自然は物質のみで成り立っている」とか「身体に不良がでたらパーツを取り替えればいい」みたいな機械論も生み出したわけだから、筆者はおそらくこれを否定してくるぞ。あ、っていうかヨーロッパと日本の対比関係もあるし、この先一元論ってキーワードがあったら要チェックやな。よかったー!哲学とか心理系って本文が難しいから、その分設問が簡単になること多いのよね!
といった感じで、一言一句から得られる情報量や先読み能力に差が出ます。

現代文や小論文では、「構造主義」「相対化」「再帰性」みたいな聞き慣れない言葉がバンバン出てきますよ!
読解力を向上させるには、確かな語彙・頻出テーマの背景知識が必要です。
今回は、皆さんの読解力を爆上げしてくれる『現代文キーワード読解』についてご紹介します。
この本の概要
基本情報
・ページ数:360
・出版社:Z会
・サイズ:B6判
・発売日:2015/7/1
この本の構成は以下のとおり。
第1部 キーワード編(計239ページ)※この本のメイン※
基本|科学|言語|文化・宗教|哲学・心理|近代|現代社会|
分類別のキーワードを解説や背景知識付きで学習
第2部 頻出テーマ編(計34ページ)
自己・他者|身体論|メディア・芸術論|政治論|経済論|歴史論
簡単な問題演習を通じ、頻出テーマの方向性を整理
第3部 小説重要語編(計45ページ)
小説における重要語句を分類別のキーワードを文章・解説付きで学習
補講 読解ツール(計15ページ)
同内容表現|対比表現|否定→肯定|譲歩表現|逆説表現+筆者の主張|具体例の読み解き方|因果関係|時間・時代の変化|空間の比較|常識批判|疑問→解答+根拠はワンセット|呼応表現
論理的読解の着眼点のまとめ

無駄のない構成です!

引用:現代文キーワード読解(Z会)
辞書のように単語とその意味だけが記述されているのではなく、入試でどのように使われたか(本文)が丁寧に記述されており、さらに図解や解説も掲載されているため、深いレベルでの知識が定着します。
この本の良い点
大きく分けて、この本の良い点は4つあります。
①必須の語句が必要十分に掲載
上で述べたとおり、この本には現代文・小論文で必須のキーワード210が掲載されています。
もちろん、僕もこの本を熟読しましたが

無駄なキーワード1つもないやん… これ全部知らないと読解が苦しくなるね…!
と感じました(本当に)。
掲載されているキーワードも解説も、そして背景にある知識の説明も、どれもが無駄を削ぎ落としており、「現代文・小論文で必要な語彙力を必要十分、効率よく学習したい」と考えている人にとって最適の一冊といえます!

丸暗記ではなく、背景を学んで理解暗記できるのはありがたいですね!
②読みやすくする工夫がすばらしい
それぞれのキーワードが見開き1ページでまとまっており、キーワードごとにページが完結していて非常に読みやすいです。また、程よくカラーが用いられており、読者を飽きさせない、目を疲れさせないといった配慮がなされています。

『速読英単語』の現代文版と思ってくれればOK!
加えて、それぞれの章末には確認テストも用意されているため、確実に知識が定着しているか否かを点検することもできます。
さらに素晴らしいと感じたのは、抽象語句の説明です。「形而上」「弁証法」といったキーワードって、上位概念すぎてなかなか理解しにくいですよね?でもこの本は、
弁証法
対立または矛盾する二つの事柄を、統一・総合することによって、高い次元の結論に至る思考方法。
引用:現代文キーワード読解
といった抽象的記述に留まることなく
たとえば
経済発展を優先させるべきだという意見と、環境保護を優先させるべきだという意見が対立しているとしよう。ここで、環境を保護しながら経済を発展させる環境政策を導入し、両者を調和させるような結論を出したとする。この結論を導くプロセス(過程)は、「弁証法的」と言うことができるだろう。より高い次元で矛盾を解決し、結論を導くのが弁証法なのだ。
引用:現代文キーワード読解
といった感じで、読み手が理解できるレベルまで具体的に記述しています。

本当に抽象と具体のバランスが良い本です!分かりやすい用語はサクッと解説してあります!
③持ち運びが楽|スキマ時間で学習できる
『速読英単語』と同じサイズなので、持ち運びが非常に楽です。そのため、電車や休み時間、お風呂など、ちょっとした時間を活用して学習を進めることができます。
もちろん、1つ1つの単語ベースで学習していくため短時間で学習を切ることも容易です。

僕も飛行機や電車移動のとき、「次の授業まで10分空いたなぁ〜」っていうときに通読し、1ヶ月程度で1周回すことができましたよ!
④読解ツールも優秀
巻末には、文章を読む上で必要になる「読解ツール」も掲載してあります。
同内容表現
つまり山水とは特定の文化圏で定められた文化の制度であって自然現象を指すのではない。
論理的読解の最初の一歩は、同内容表現を追跡することである。(以下略…)
引用:現代文キーワード読解
対比表現
人間以外の動物は普通<本能>の赴くままに行動するとき、そこに迷いや不安はない。(以下略…)それに対して人間は、そのような<本能>の導きを失い、したがって、混沌と化した世界に対して(以下略…)
対比表現を発見する際には、①対比のテーマ<=何について>、②対比されている項目<=何と何>、③比較内容<=どのように違うのか>の三点を押さえることが重要。(以下略…)
引用:現代文キーワード読解
ほかにも、否定→肯定|譲歩表現|逆説表現+筆者の主張|具体例の読み解き方|因果関係|時間・時代の変化|空間の比較|常識批判|疑問→解答+根拠はワンセット|呼応表現 といった読解ポイントがまとめられています。

読解のエッセンスが濃密に凝縮されています!「この少ないページ数によくまとめたなぁ!」と感心させられますよ!
この本の悪い点
この本は本当におすすめです!すべての人に読んでほしいと心から思っています。
それでも、あえて悪い点を挙げるとすれば以下の3つがあるでしょう。
①この本だけで闘えない
これはどの参考書にも言えることですね。読解力は
読解テクニック × 知識(語彙・背景) × 集中力(注意力)
で成り立つと僕は捉えています。
この本だけで現代文・小論文が完成する…というものではなく、あくまで知識(語彙・背景)を鍛える本であると割り切る必要があります。
\初学者はこれらの本がおすすめ!/

これらの本で読解テクニックを習得したり、過去問・問題演習を繰り返し集中力(注意力)を体得したりして、盤石な国語力を養成しましょう!
②対策に時間を要する
強いてあげれば、これが最大のデメリットです。
私立文系を目指す人は必携ですが、時間のない医学部受験生にとっては

英単語もやって青チャートもやって…重要問題集もやって…じ、時間がないよ!
となってしまうかもしれませんね。
たしかに、読解力を向上させるため語彙力を鍛えるのは大切なことですが、英語・数学・理科といった学習が追いついていない医学部受験生にはより優先順位の高い勉強があるはず。
電車では英単語… 合間の休憩時間に数学の公式暗記… お風呂で化学式のチェック…
いまの勉強でかなり手いっぱいな人は、無闇に手をださないのも一手です。

どうしても読解力をつけたい人は必須ですが、英語・数学・理科ができないことには話になりませんからね…
③医学部で頻出とは言えないテーマも多い
言わずもがな、医学部の小論文では医療系のテーマを出題してくることが多いです。
しかし、「医学部とは関係のないテーマを出題して、その人の幅広い教養を試したい」と考え、医療系以外のテーマを出題してくる大学も増えてきました。

医療と関係のないテーマが出されたときは、無理やり医療系に繋げて記述する必要はなく、自身の持つ教養力で対処してしまってOKです。
そのため、この本に掲載されているキーワードたちも、教養的には幅広く学習しておきくべきなのですが、それを加味しても重要度の低いキーワードも掲載されているのは事実です。
時間に余裕のある方は、全てのキーワードを幅広く学んでおいた方が良いと思いますが、時間のない方は以下のとおり優先順位をつけて覚えていくことを推奨します。
第1部 キーワード編(計239ページ)と補講 読解ツール(計15ページ)のみ学習
⚫︎必ず覚える … 基本|科学
⚫︎覚えるのが望ましい… 哲学・心理|近代|現代社会
⚫︎余裕があれば覚える… 言語|文化・民族
※共通テスト受験生は「第2部 頻出テーマ編」「第3部 小説重要語編」も読む
どんな人におすすめか?
本当はすべての人におすすめしたいですが、強いて絞るなら
✅ 私立文系を受験する
✅(医学部志望)高校1・2年生で読解をじっくり鍛えたい
✅(医学部志望)受験生で時間に余裕がある
✅(医学部志望)国公立志望
こういった人たちに強く推したい一冊と言えるでしょう。取り組むと決めたら、1周だけで満足せず、何度も何度も繰り返し学習するようにしましょうね!

医学部受験生で、英語・数学・理科が追いついていない!ヤバい!と言う人は、まずはそちらに集中することをおすすめします!ただ、読解力をつけたい人は必携!
