集団討論で最も大切なこと/採点のされ方
最初に、集団討論において最も大切な心がまえをお伝えしたいと思います。集団討論はグループみんなで受かろうね!との意識が大切です。
集団討論は、グループ皆で受かるorグループ皆で落ちるといった傾向が強く、皆さんと当日一緒になったグループの人は、一蓮托生/運命共同体のような仲間です。たとえ、英語・数学・理科・面接・小論文といった科目が「ほか受験生との競争」といった性格を有していても、集団討論だけは別になります。
ここで皆さんに質問です。皆さんが採点官だったとして、次のA or Bのような受験生がいた場合、どちらの受験生を合格させたいと思いますか?
A:自分の主張を通そうと、15分間自分ばかり発言している受験生
B:皆の主張を加味し、15分間自分の発言と皆の意見をバランス良く聴き入れている受験生
Bの受験生の方が心象良く見えますよね。
A.自分だけを優位に見せようと、他者のミスを強調する受験生
B.皆で受かる意識を持って、他者のミスを優しくフォローする受験生
こちらもB.の受験生の方が心象良く見えますよね。
このように、“私だけが” 受かろうと思ってとった行動は集団討論においてナンセンスであって、優秀な受験生の本質には“グループみんなで受かろうね!”という意識が根付いているんです。
次のチャプターから、より詳細な6つのポイントをお伝えしていきますが、6つのポイントはどれも、「“グループみんなで受かろう!”という意識を持っていたら、普通こんな行動とるよね!」と言えるものです。ここは重要なポイントなので、確実に頭に入れておくようにしてください。
集団討論のチェックポイント①:コミュニケーション能力
メンバーの話を参照する
少子化は「若者に子育てをするためのお金がない」ことが原因かと思われます。そのため、各家庭に子育てを支援する補助金を給付するのが良いと思いました。
●●さんのおっしゃるとおり、「若者に子育てをするためのお金がない」ことが少子化の原因だと私も感じています。ただ、補助金を提供するだけでは付け焼き刃的になってしまうので、経済を活性化し賃金を向上させるのが抜本的な解決策かなと私は感じます。
といった具合です。自身の意見を発信する前に、同じメンバーの発言を参照しているため、「あぁ、この子はちゃんと話を聴いてるなぁ」との心象を抱きますよね。
メンバーの話をうなずいたり、相槌したりする
「うんうん」とうなずいていたり、「なるほど」「おぉ、いいですね」といった言葉を挟んでいる人って、基本的に話を聴いている印象を受けますよね。傾聴していることを採点官へアピールするため、この点も意識しましょう。
もちろん形式的に「うんうんなるほどへぇーそうなんだー」と言いながら、話の本質を聴いていない場合はNGです。相手の話をキチンと聴くことは前提ですよ!
発言の少ない人へ話を振る
集団討論で最も大切なのは、グループみんなで受かろうね!という意識でしたよね。Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさん、グループに5人が在籍している場合には、A≒B≒C≒D≒Eとなるよう、全員の発言量を整えることも大切です。
「おいおい、Eさん全然発言してないじゃん… 誰か輪に入れてやれよ…」といった心象を抱かせないためにも、発言できなくて困っている受験生へ
●●さんはこれについてどう思いますか?
と、優しくパスを出してあげると良いでしょう。
自分の話は端的にまとめる
これは不合格になる受験生に多いパターンですが、「自分の発言はほかメンバーの貴重な時間を奪っている」との認識が足りてない人は多いです。制限時間は有限。“グループみんなで受かろうね!”との意識を持ち、自身の話を端的にまとめるよう心がけましょう。
明快かつ適切な声量で発言する
近年の入試では新型コロナウイルスの影響により、パーテーションやマスク、フェイスシールドを用意することが増えました。受験生にとっては苦しいかもしれませんが、“グループみんなで受かる”ためには、メンバー・採点官問わず全員に聞こえる声で話す必要があります。
集団討論といっても、面接と同様、コミュニケーション能力の有無は強く点検されています。以上、お伝えした点を頭に入れ、身構えておくようにしましょう。
集団討論のチェックポイント②:協調性
チームが話しやすくなる良い雰囲気づくりを心がける
良い雰囲気づくりはパターン化されたものではないので、“難しい”と感じた人は無理に手出ししなくても良いでしょう。以下に代表例を挙げていきます。
✔メンバーのミスを優しくフォローする
あ、ごめんなさい… 「高齢化の問題点」じゃなくて「少子化の問題点」が今日のテーマでしたね… 間違えちゃいました…
いやいや、全然大丈夫だよ! 「高齢化」と「少子化」は密接に関わっているからね!●●さんの意見もヒントになると思う!
✔皆が疑問に感じていることを先陣切って聞く
ちょっと勉強足りなくて申し訳ないんですが、ここに書いてある「ひのえうま」ってなんですかね?笑 誰かご存知の方いますか?
✔気まずい雰囲気を壊し柔和で話しやすい雰囲気にする
…… あ、おばけが通った…。あれ、静かになると「おばけが通った」って言いません?! 言わないかぁ… そっかぁ… 茨城県限定なのかな…笑 よし、とりあえずここまで出た意見を整理してみませんか。
自分の役割を見つけ果たす
「集団討論ってリーダー役を務めないと合格できないんでしょ?」と考えている人はいるかと思いますが、これは大きな間違いです。
集団討論の役割には
・議論の方向性をまとめる司会進行(リーダー)
・議論の時間・進捗を管理するタイムキーパー
・議論のメモや板書を引き受ける書紀
・議論のアイデアを出すことに専念するアイデアマン
こういった役割が存在します。
たしかに、司会進行(リーダー)となって議論をまとめたり舵を切ったりすれば、採点官にとって心象の良い人物像を振る舞うことができますが、司会進行(リーダー)を引き受けたにもかかわらず、議論をまとめたり舵を切ることができなければ悪目立ちしてしまうのです。
倍率100倍にもなる就職活動では“できるやつを合格させる”という要素が強いかもしれませんが、倍率3倍程度の医学部受験では“できないやつを落とす”という要素が強いです。そのため、無理して肌に合わない役割を引き受けるよりも、自身が集団の中でどう貢献できるかを考え適切に振る舞う方が合格率はグッと上がるでしょう。
とはいえ、自分が集団の中でどういう振る舞いをするのが得意なのか、というのは実際に集団討論の経験を重ねないと分かりませんので、各予備校で不定期に開催されている集団討論対策の講座があれば、積極的に参加することをおすすめします。
また大学の中には、試験開始前に「司会進行はじめ様々な役柄は設定しないようにしてください」と注意喚起してくるところもあるくらいで、医学部受験においてはさほど集団における役割を重視していないとも言えるでしょう。
ただそういった場合でも、「僕はタイムキーパーをやります!」といった具合に役割を公言しないだけで、自分の中では「皆の話をまとめるのが得意だからその部分で貢献しよう」「時間管理と議論の収束が得意だからその部分で貢献しよう」といった意識を持っておくことは大切です。
グループ全体で問題点を共有する
✔コラボレーションを意識する
私は少子高齢化の対策として、教育費に関する補助金を出すのが良いと思います。
私は少子高齢化の対策として、男性の育休取得を推進するのが良いと思います。
私は少子高齢化の対策として、公的機関による街コンを推進すべきだと思います。
もう1つ少子高齢化対策として、出産・育児の相談体制を整えるのが良いと思います。
少子高齢化対策として、義務教育の場で少子化の現状を伝えるのが大切だと思います。
良いアイデアですね。では具体的にどのような授業を展開すべきだと思いますか?
一方向的な授業だと面白くないですし、記憶にも残りにくいかもしれませんね。
それなら少子化に関するシリアスゲームを作成してはどうですか? 例えば、人生ゲームをアレンジしたゲームでライフイベントを俯瞰してもらうとか!
面白そうですね。ほかにも、少子化の一途を辿ると国際競争がどうなってしまうのか、シミュレーションゲームなんかを作っても良いかもしれませんね。
後者の集団討論の方が心象良く感じますよね。集団討論とは、文字通り“集団”で“討論”するものであって、“個人”がそれぞれただ発言するものではありません。
Aパターンでは、“個人”がそれぞれの考えを述べているだけで、“集団”で話し合おうとする意識がありませんでしたよね。
一方、Bパターンでは、ある人の発言に誰かの発言が上乗せして議論が展開し、さらに誰かの発言が上乗せして議論が展開し、さらに発言が上乗せして…といった具合に、「このメンバーが集まったからこそこのアイデアが生まれた」と言えるようなコラボレーションが誕生していますよね。
良い集団討論にするにはグループ全員が一丸となって同じテーマについて話し合い議論を展開することが必要であって、そのためにはグループ全員が話し合っているテーマを把握していることが重要なのです。
✔議論が猛スピードで進んでいるのであれば、これまでの議論を整理する
極論を言えば、グループメンバーの誰1人として「議論についていけていない」人を作らないようにすべきで、
とりあえずここまで出た意見を整理してみませんか。問題点は〜で、対策は〜
といった具合に論点を整理することも肝要です。
✔分からない用語があった場合には、代わりに聞いてあげる
ここに書いてある「ひのえうま」ってなんですかね?笑 誰かご存知の方いますか?
と代わりに聞いてあげるのも良いでしょう。問題点をメンバー全員で共有することができますよ。
再度になりますが、協調性の有無は集団討論において要になってきます。以上お伝えしたことは確実に身に着けておきましょう。
集団討論のチェックポイント③:論理的思考力
自身が主張するときは、根拠を明確・客観的にする
「少子高齢化の対策は補助金がベストだ!異論は認めない!とにかく補助金!いいから補助金だぁ!」と言われても、説得力は皆無ですよね。
自身の主張には論証責任がつきまといます。何かを主張するときには、必ず客観的な根拠を挙げるようにしましょう。こんな感じです。
少子高齢化の対策として、各家庭への補助金が良いと私は思います。グラフによれば“子どもを産まない”選択をした人の背景には、“教育費が高いから”と回答している割合が高いため、金銭面をサポートしさえすれば“子どもを産もう”と考えるようになると考えたからです。
論理的な話し方を心がける
✔結論を先に述べ、次いで理由を述べるようにする
✔資料1・資料2、1ページ・2ページといった具合に番号を示し、誰が聞いても一義的な解釈ができるようにする
✔複数の考えを提示するときは、1つ目は〜・2つ目は〜といった具合にナンバリングをして伝えるようにする
まとめてみるとこんな感じです。
少子高齢化の対策として、私は市区町村が主導となった街コンの開催が良いと思います。理由は2点ありまして…1つが、資料2にあるとおり「出会いがない」と回答している人が多いこと。そしてもう1つが、資料3のとおり晩婚化が進んだ影響で出産をためらっている人が多いことが理由です。
議論を深掘りし具体性を持たせる
集団討論のセミナーに参加してくれた受験生から良く受けるのが、「話し合いの途中で話すことがなくなってしまって、議論が止まっちゃったらどうすればいいんですか?」といった質問です。
ズバリお答えしますと、たかが数十分の議論で、集団討論のテーマとなっている現代問題を解決させられるような案を捻出することはできません。
テーマとなるのは、「少子高齢化」「国民の健康増進」「児童虐待、子どもの貧困問題」「日本人のグローバル化促進」といったような、専門的知見を持った大の大人たちが「あーでもない!こーでもない!」と何年も何年も議論しているにもかかわらず解決していない現代問題を集団討論で取り上げることがほとんどです。
にもかかわらず、問題の本質を捉えているとはいえない僕ら受験生が、たかが数十分の議論で答えを見出すことなんてできませんよね。
採点官目線で厳しいことをお伝えしますと、議論が詰まってしまう原因は具体性に乏しいことがほとんどです。そのため、議論が詰まった際には「具体的にはどうすれば良いか?」といった具合に深掘りすると、ロジカルな心象を与えることができるでしょう。
私は少子高齢化の対策として、義務教育の現場で少子化の現状を伝えるのが大切だと思います。
良いアイデアですね。では、具体的にどういった授業を展開すべきだと思いますか?
論理的思考力は医師にとって必須のスキルです。
少ない発言の中で確実にアピールできるようにしましょう!
集団討論のチェックポイント④:知識力
正直お伝えしますと、今回お伝えする6つのチェックポイントの中で最も再現性がなく、当日の神頼み感が強いポイントになります。
先ほど述べたとおり、集団討論で課せられるテーマは「少子高齢化」「国民の健康増進」「児童虐待、子どもの貧困問題」「日本人のグローバル化促進」といった、時事問題・現代問題のような具体的テーマが多い傾向にあります。
「生きる意味について」「理想の医師像とは」といった抽象的テーマも出題されることはありますが、小論文に比べるとその頻度は少ないです。
時事問題・現代問題のような具体的テーマは、“知ってるかor知らないか”の要素が強くなります。知っているテーマであれば、集団討論でも積極的に発言ができますが、知らないテーマであれば、集団討論での発言が消極的になってしまいますよね。
日頃からNewsや新聞などを見て、社会問題に関心を持っているかどうかが決め手となっていますので、
・朝起きてから登校するまでの10分
・電車内の15分
・寝る前の10分
自分の中で時間を決め、毎日少しずつ情報収集していくのが良いでしょう。医療・社会福祉・国際的な問題は多く出題されている傾向にありますので、特に注意してください。
日テレNEWS・TBS NEWS DIGのようなYouTubeニュースチャンネルを登録しておいて、新着で上がってきた内容をチェックするのもおすすめですよ。
集団討論のチェックポイント⑤:段取り力
就職活動といったハイレベルな集団討論ではこの力が求められますが、医学部受験の集団討論でこれが意識できている受験生は少ないです。
ちょっと厳しいことを言いますと、ほとんどの医学部受験生は時間内に求められた成果を出そうとする意識が非常に低く、「まぁ終わればいいや」「まぁそのうち話がまとまるだろう」といった甘い感覚で挑んでいます。だからこそ、
討論の時間が20分で、問題点3点と解決策3点を挙げ、最後に代表1人が発表することになっています。最初の8分で問題点3点、次の8分で解決策3点をまとめ、残った4分で代表者の選定と発表の練習、という流れでどうでしょうか?
8分が経過したので、そろそろ解決策の方へ話を移したいと思います。
といった具合に、段取り良く議論を進めていると「あの子はグループの議論を円滑に進めているな。時間内にキチンとまとめようとしている。」と採点官へ好印象を与えることができます。
✔設問を丁寧に確認し、進行を考えた議論をすること
✔時間内に円滑な議論が進められていること
これらは良い集団討論の特徴なので、ぜひとも頭に入れておきましょう。
集団討論のチェックポイント⑥:積極性
これはいままで挙げてきた5つのポイントとちょっと評価基準が変わります。これまで挙げた5つのポイントは「あったら良いな」と言えるポジティブ形式の評価基準でしたが、この積極性については「ないと困る」「ないと落ちる」と言えるネガティブ形式の評価基準になっていると考えて良いでしょう。
言い換えると、積極性がなければ受験生の良し悪しすら判断することができず「あの子、影が薄いからどう貢献してるのか分からないなぁ…」と悪印象を与え、不合格となってしまうのです。
僕の所感ですが、集団討論で落ちている受験生は、この積極性に欠け集団に貢献できていないことが多いです。どんなに内気な人でも、グループメンバーの平均以上の発言量は確保するようにしましょう。
とはいえ、ハリキリすぎて集団討論で自分ばかり話すのも良くない状態です。集団討論で独り相撲してしまっては、確実に落とされてしまいます。
集団討論は“集団”で“討論”するものであって、“独り”で“プレゼン”するものではありません。グループに5人が居合わせたとすれば、A≒B≒C≒D≒Eの発言量となるよう意識し、バランス良く振る舞うよう心がけてくださいね。
まとめ
以上が医学部受験における集団討論のチェックポイントでした。
とはいえ、集団討論は机に向かって「ウンウン」唸っているだけでできるようになる科目ではなく、予備校等で対策講座を受け、実践する機会を設けなければできるようになりません。
集団討論は実践を積めば積むほどできるようになる “慣れ” の学問です。
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